2006年09月09日

「双系制」という文化

ジャワ人には「姓(苗字)」が無い。「名」すなわち個人名だけである。ちょっと意外な感じがするが、そんなに珍しいことではない。ジャワ人に限らず、インドネシアの多くの民族がそうだし、マレーシアやビルマでもそうだ。
 
彼らの家族観は父系(男系)でも母系(女系)でもない「双系制」に基づいているのだ。

双系制とは、父系と母系の双方を全く同じ様に「親族」と認識する文化である。そこでは、日本語で言う「家」とか「家系」みたいなものは、概念としても実態としても存在しない。

結婚した夫婦は、夫方、妻方のどちらにも属さない。あくまでも等距離である。だから、家族名としての「姓」は存在しないし、その必要も無いのだ。もちろん「直系」や「傍系」という考え方も無い。

インドネシアの国父とも慕われた初代大統領スカルノ(Sukarno)は、「スカルノ」がフルネームである。「スカルノ・なんとか」でも「なんとか・スカルノ」でもない。さっぱりしたものである。

今の大統領はスシロ・バンバン・ユドヨノ(Susilo Bambang Yudhoyono)という長い名前だが、これは「戦いに常に勝つ気高い闘士」という意味である。つまり「スシロ・バンバン・ユドヨノ」全体が個人名で、それがフルネームなのだ。

余談ながら、王家だけが姓を名乗るという民族もある。王家はヨソモノであるが故に特別なのだろうか。
日本と逆なところが、ちょっと面白い。

以前書いたように、私自身の意識も多分に双系的である
posted by 非国民 at 23:59| Comment(4) | TrackBack(2) | 歴史と文化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
そういえば、アウンサン・スーチーさんはアウンサンが姓でスーチーが名前だと思っていましたが、これ全部で名前なんだそうですね(アウンサンはお父さんのアウンサン将軍から、スーチーはお母さんから)。姓が無くなったら夫婦別姓なんて問題は吹っ飛んでしまいますね。けっこう魅力的かも。

でも、子どもっぽい疑問で恐縮ですが、そしたら同じ名前の人をどう区別すればいいんでしょうね(もっとも、これは姓があっても生じる問題ですが)。やっぱり、「ナザレのイエス」みたいに住んでる場所と合わせて呼ぶようになるんでしょうか。しかし私は三条通りに住んでいるので三条のなんたら、という呼び名になるかもしれません。それじゃあ普通の氏名と変わらないのですが。

以上、くだらないおしゃべりで失礼しました。
Posted by ゲスト at 2006年09月10日 03:26
>barbaroidさん
ああなるほど。個体識別のために名前が長くなる、ということはあるかも知れません。ジャワ人の場合、2語か3語の個人名が普通ですし、4語の「名」も珍しくありません。
もっとも、それとは別に、長い名前は家柄の良さを示すという感覚も漠然とあるようで(王族や貴族の名前はむやみに長い)、父祖の名をずらずらと後ろにくっつけたりする場合も見られます。これはアラブ文化の影響でしょうかね。

地名で識別するというのは、私の親族がごく普通に実行しています。何とも思ってませんでしたが、一般的ではないんでしょうか?
親族には当然ながら私と同じF姓が多数いるわけですが、電話かけてきて「山科のFですが・・・」なんて言いますよ。私の方も「山科のおじさん」という覚え方をしています。
Posted by 非国民 at 2006年09月11日 05:32
地名がそのまま苗字になった例もいくらでもありますよ。


>私は三条通りに住んでいるので三条のなんたら

公家の三条家がたしかそうではなかったですか?
Posted by ゲスト at 2006年09月11日 08:56
>はなゆーさん
地名や地形に由来する苗字は、たしかに多いですね。
ただし、それも代々引き継がれる家というコンセプトがあっての話ですから、双系的な文化の下では成立しないでしょうね。
インドネシアでも、結婚した夫婦が妻方あるいは夫方の親と同居する場合がありますが、それがどちら方の親なのかは、あくまでもケースバイケースで、一般的なルールはありません。
もっとも、この点に関しては、現代の日本でも(特に都市部では)結構そのような傾向が見られます。日本人でも私の様に双系的な祖先観を持つ人は、案外少なくないのじゃないかと想像しています。
Posted by 非国民 at 2006年09月12日 21:05
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