2009年09月18日

Radio Tarifa【Rumba Argelina】

radiotarifa.jpg
アフリカに一番近いヨーロッパ

イベリア半島の最南端にタリファという小さな街がある。人口は1万7千人あまり。ジブラルタル海峡に面した港町で、対岸のモロッコまではわずか15kmほどである。

下北半島北端の大間岬から北海道までが15kmくらい。川崎と木更津を結ぶ東京湾アクアラインも大体同じくらいだ。そう思うと、ヨーロッパとアフリカは意外なほど近い。タリファからモロッコのタンジェまではフェリーも出ていて、晴れた夜には対岸の夜景もよく見えるという。そのくらい近いのだ。

Radio Tarifaは、この街から発信する架空の放送局というコンセプトのバンドだ。80年代の終わり頃に結成され、現在までに4枚のアルバムを出している。この【Rumba Argelina】は1993年のファーストアルバム。

ざっくりと言えばフラメンコのバンドなのだろうが、彼らの紡ぎ出す音楽は相当にユニークだ。「アルジェリア(人)のルンバ」というアルバムタイトルが示す通り、フラメンコとは言っても、アラブ、とりわけマブレブの音楽風土が深く浸潤している。使っている楽器も中東風だったりする。

それはフラメンコの地層を掘り起こし、そのルーツを再確認する作業とも言えるが、そういったアカデミック堅苦しさは全く感じられない。むしろ、古来より(そして今でも)多くの人が海を渡ってアフリカから訪れて来たヨーロッパの入口たるタリファの街の空気を素直に反映したもののように思える。フラメンコはロマの音楽だと言われているが、ロマたちがアンダルシアへと到った通り道であるマグレブの文化が、そこには血となり肉となって間違いなく継承されているのだ。

今日のアラブポップス、特にエジプトからモロッコあたりのそれには、フラメンコのテイストを取り入れたものが少なくない。もちろんそれは近年になって「逆輸入」されたものだが、ある種の親和性というか、そのテイストを違和感無く受け入れる下地が、かの地にはあったと見るべきだろう。

いささか講釈が長くなったが、これがタイトル曲の「Rumba Argelina」。ライを彷彿とさせる淡々とした趣きながら、あるいはこれがフラメンコの原型かとも思わせるパフォーマンスだ。「Mañana」の叙情も良い。

フラメンコとしては「熱」を感じない地味な曲が多いが、地味に良いアルバムだ。


検索用;manana
posted by 非国民 at 04:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽;南欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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