
オシャレと叙情を絶妙に両立したラウンジジャズの名盤。
とにかくジャケットがステキです。ちょっとレトロステクティブな感じを残しつつもポップでキュート。結構大胆な配色なのに、下品なところも無い。ジャズのアルバムにこういうジャケットをもって来るセンスはさすがイタリア人かと感心する。侮り難し。
これを出しているのはスキーマSchemaというミラノのレーベルで、もっぱらオシャレ系のラウンジミュージックを得意としているところだ。適当に買いあさってもハズレの少ない上質なレーベルである。本作は1998年の録音で、Quartetto Moderno名義ではただ一枚のアルバム。スキーマの看板アーティスト、ニコラ・コンテNicola Conteがプロデューサーに名を連ねている。
中身は意外にもしっかりとジャスしている。そんじょそこらの安っぽいラウンジミュージックとは明らかに異質だ。当時の流行りというわけでもなかろう。編成はヴィブラフォン、ピアノ、ベース、ドラム。打ち込みは一切無しの全編インスト。Quartetto Modernoという名乗りは当然ながらMJQを意識してのものだろうが、確証はない。全9曲のうち、アルトサックスとフルートが2曲ずつゲストで参加している。
ヴァイブ奏者のPasquale Bardaro(パスクァーレ・バルダーロとでも読むのか)がリーダーらしいが、この人、自分のソロ以外ではあまり音を出さない。ソロも概して控えめで、あまり前に出て目立とうというタイプでは無さそうだ。良く言えば上品。写真を見るとゲイリー・バートン流のマレット4本持ちスタイルだ。暗く重たい音色が特徴的。
ピアニストはそれほど「いい子」では無さそうで、彼の書いたオリジナル曲はテーマが7拍子だったりする(良いのかラウンジミュージックが変拍子で)。それでもガンガン突き進むタイプのピアニストではない。全体としては個々のソロプレイよりもアンサンブルで聴かせる構成になっている。
このお上品な二人を、むやみに人間臭いベースとドラムが支える。妙にもっさりとブーストしたウッドベースに、やたらバサバサと「人間の息づかい」を感じさせるドラム。最初は理解に苦しんだが、聴いているうちに、このバランスが不思議と心地よくハマって来る。
曲目はオリジナルが3曲にカヴァーが6曲。ヴァイブ、ピアノ、ベースがそれぞれ1曲ずつ書いている。他の曲も、いわゆるガチガチのジャズスタンダードではなく緩めの映画音楽が多い。それにしても1曲目がルグランの「The Windmills of your mind」というのは、やはり「おしゃれジャズ路線」を目指していたのかなあ。
4曲目の「Love thema from Spartacus」が、何と言っても素晴らしい。
http://www.youtube.com/watch?v=fPWJ_ONnbxI
多くのミュージシャンに弾き継がれて来た不朽の名ワルツを、さしたるヒネリも無しにしっとり聴かせてくれる。しんみりと湿ったNicola Stiloのフルートが、控えめなバックと相俟って、どこまでもセンチメンタルに美しい。
7曲目の「Sconsolato」も本当に良い。
http://www.youtube.com/watch?v=mt-4BHN91QA
原曲はJimmy Woodeの書いた渋い曲だが、ここでは独特のモサモサ感を伴った面妖かつ濃厚なラウンジジャズ(?)と化している。ただオシャレなだけじゃなくて、その中に豊かな叙情を偲ばせるこんな演奏が、実はとってもカッコいいのだ。
他の曲は、こちらのページでサワリを試聴出来る。
http://www.digital-tunes.net/releases/ecco_
アルバムタイトルになっている5曲目は「Theme from Ecco」となっているから、多分これも映画音楽なんだろう。軽快なボサノバ調だが、例によってモッサリ気味のベースとドラムが「生(ナマ)」の雰囲気を強く醸している。考えてみればギター無しのボサノバというのも珍しい。
で、結局ジャケットの女性は何なのかというと、たぶん中身には何の関係もない。音を聴きながらこのジャケットを眺めると、改めて「やるなぁ」と感心する。
同志の記事を読むまで、私はコイツを60年代頃の録音だろうと思っていました。98年でこの音楽と録音。ニコラ・コンテという人は
なかなか「あざとい」人だなあと感心しました。すっかりダマされたっ!
それにしても『世界のはらわた』って一体なんですか。どうしてやきとりさんは、そんなことまで知ってるんですか?
ところでタイトル曲が『世界のはらわた』のメインテーマというのは私の勘違いで、正しくは『地球の皮を剥ぐ』のテーマでした。まあどーでもいい話かもしれませんけど(笑)。