2009年04月29日

Doc Gynéco【Quality Street】

doc_gyneco.jpg
婦人科医を名乗るヘロヘロ軟派ラッパー。

ドク・ジネコ。むろん本名ではない。docteur gynécologisteはフランス語で婦人科医の意。そんなふざけた芸名を名乗るこの男、その名前通り生粋の軟派ラッパーだ。パリ郊外の生まれだが両親はグアドループの出身。褐色の肌はカリブ海に由来する。

なにしろデビューアルバム(1996)のタイトルが【Première Consultation(初診)】。しかもその一曲目が「Viens voir le docteur(医者に行こう)」である。のっけから洒落がキツい。このヒットによって一躍有名になり、テレビ番組にもよく出ていたが、ほとんど常にラリっていた。イヤラシく粘っこく絡み付く独特のヴォーカルスタイルは、フレンチラップ界においてもさすがに異色と言える。

前回の大統領選挙ではサルコジ支持を公言して大いに男を下げた(?)ドク・ジネコだが、本作はそれよりも前の作品、2001年に出た3枚目のアルバムだ。

粘っこさは若干薄れているが、なかなか良いアルバムだ。ラップの嫌いな私には、この辺がちょうど聴きやすいのかもしれない。全曲を本人が書いているが(CDのインナーでは本名のBruno Beausirでクレジットされている)、音づくりに幅がある。気怠いソフトファンク調あり、軽快なレゲエあり、程よくメロディアスで、一枚を通して聴いても飽きない。まあ中には「いかにも」というヒップホップも何曲かあって、それはちょっとアレだけど。

基本的には打ち込みなんだけど、楽器の音がちゃんと聞こえて来るという点が素晴らしい。「Caramel」のギターの音なんて結構凝ってる。ピアノやホーンの使い方も渋い。それにしてもシュールなPVだなあ。

ガチャガチャと騒がしくないという点も良い。アルバムのラストを締めくくる「Souveraine(Paris cool mix)」なんて、静謐な印象すら受ける。私の大好きな曲だ。何年か前までは、この曲のPVもyoutubeに載っていたんだけど「猥褻の度が過ぎる」として削除されてしまった。

ちょっとヤバい雰囲気を醸しつつもアルバムのコンセプトを巧みに汲んだジャケットの写真は、ジャン-バプティスト・モンディーノJean-Baptiste Mondinoの仕事。これまた見事です。

検索用;doc gyneco,
docteur gynecologiste,
Premiere Consultation
posted by 非国民 at 01:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽;西欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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