
いささか曖昧な香港の四季。
「あなた本当に歌手ですか?」と問い詰めたくなるようなジャケットだが、なかなかどうして、中身は極上。
Candy Loこと盧巧音の2004年アルバム。新作4曲を収めたベスト盤である。当地で「新曲+精選」と呼ばれるスタイルだ。香港ではアルバムがすぐに廃盤になるせいもあって、やたらとベスト盤が出る。
そんな訳で、本作はお買い得感たっぷりの2枚組34曲入り。これがまた、どの曲も良い。曲調も、オシャレなラウンジ系からちょっと尖ったロック調、そして王道の中華ポップまで幅広く押さえていて、通して聴いても飽きることがない。かと言って散漫な印象もない。34曲も入っていて「コレはちょっと…」というハズレが全く無いというのは、本当に凄いことだと思う。
彼女は広東語でも北京語でも歌う歌手だが、このアルバムは全曲広東語。香港の歌手にしては珍しくスッキリした声質なので、広東語の濁った感じが無く、その辺も私の好みなのかな。ソロになる前はロックバンドで歌っていたというだけあって、サウンドの創りもクオリティが高く、しかも、凝ったサウンドの中にあってヴォーカルの存在感は揺るがない。
アルバムタイトル(中文サイトでは【一天四季】と記されている)にある通り、34曲を春夏秋冬のテーマ別に並べてあるらしい。らしいのだが、残念なことに私にはそのニュアンスが全く分からない。香港の四季はどうなっているのだろうか。歌詞を読めば四季を感じ取れるのかも知れない。
一天四季の企画は私には通じなかったが、どれもが佳曲であることは間違いない。中華ポップをこよなく愛する人も、中華ポップを聴いてみたいけど何処から入って良いか分からない人も、買って損のないアルバムだと思う。
例によってyoutubeに音源が転がっているので紹介しておこう。
どの曲も捨て難いが、例えば秋の「自戀影院」。ロック色を帯びたクールなメロディに落ち着いたストリングスを配したアレンジが実に渋い。
あるいは冬の「垃圾」。こちらは端整なオーケストレーションに載せて「いかにも」な中華ポップが展開する佳曲だ。
彼女自身が作曲した曲もいくつかあって、これも良い。例えばアルバムの最後に収録されている「温室」。最後ということは、つまり冬シリーズな訳だが、どうしてこれが冬なのか、そればかりは非国民にも分からない。
http://www.youtube.com/watch?v=2w_IjuQav9I
ソロもありますがこちらは日本では彼女より知名度が高いか、台湾の王力宏とのデュエットです。(台湾で活動しているが、ウィキみたらアメリカ生まれでしたね。北京五輪の閉会式にも出てた)
わたくしの考える中華圏popのマスターピースの典型。
適度な湿り気とでもいうのか、現地でTV流し見してるときとか、カラOKで隣のおねいちゃんが歌いだしたときとか、こういう曲の持つ空気感ってその場にしっくりはまるのですよ。
http://www.youtube.com/watch?v=Hm1cQlvBTz0
作曲は盧巧音のアルバムにプロデューサーとしても参加している雷頌コ。彼の書く曲は往々にして「あからさまな商業路線」が見えて、それが気になる時もあるんですが、でもやっぱり上手いですよね。私も好きな曲です。
>中華圏popのマスターピース
に同意。
曲もなかなか。ただ「温室」の打ち込み感はつらいかな。PVのパイオツの谷間には目が釘付けになりましたが(笑)。
なめぴょんさんが紹介されているデュエットの方は、なぜかベストテン世代の私の琴線に触れるものがあります。
「好心分手」のサビはパッヘルベルのカノンの変奏曲みたいですね。アレンジもちょっとクラシカルだし。中華ポップ道、深し!
「好心分手」のサビがカノンだというのは全くその通りで、実は私も感じました。コード進行がもろにそうですもんね。そんなベストテン世代のやきとり同志には、こちらなんぞ如何でしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=NliXuufUTkE
歌あたまのCmaj7→Fmaj7が琴線に触れるかな。
・・・うるさくてスミマセンねえ(笑)。メジャーセブンスに関しては、私は抗いようもなくメロメロになっちゃう体質ですので、これは良い曲だ!
この歌は北京語なので盧巧音とは若干感じが違いますが、やはり間違いなく中華ポップスのマスターピースと言えるでしょう。