2009年02月07日

Kuricorder Quartet【Ukulele Kuricorder】

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午睡への誘い。ゆるゆるハイウェイスターに脱力する。


 バンド名からして駄洒落である。リーダーの栗原正己とリコーダーを引っ掛けて「栗コーダー・カルテット」。実に下らない。

もともとが知久寿焼(たま)のバックバンドとして集まったのが縁で何となく結成されたというだけあって、その名を裏切らぬ「のほほん系」音楽は、まさに極上のお昼寝BGM。ウクレレとリコーダーを中心にした小物系アコースティックの編成で、ビートルズからゴダイゴまで古今東西の名曲(やや東に偏っている感は否めないが)をカヴァーした本作『ウクレレ栗コーダー』も、ステキな脱力感に満ちている。

編成はリコーダー、ウクレレ、パーカッション(あくまで小物系が中心)、チューバのカルテット。弦楽器弾きとしては本当に悔しいが、チューバというのが実に憎い。この「ゆるゆる感」は、残念ながら弦バスでは出せないだろう。

何と言っても、こちらで試聴出来るDeep Purpleのカヴァー「Highway Star」の抜けっぷりが良い。ギター小僧の必修科目と言われるハードロックの古典を見事に脱力させている。まさしくそれは「キメるハズす」という凡庸な対立軸を軽々と超越した午睡への誘い、なのである。後半ではリコーダーが和音のバッキングをしているのは、鈴木楽器が80年代に一瞬だけ作ってすぐに忘れ去られた幻の鍵盤リコーダー、アンデス25(*1)を使っているのだろうか。エンディングで唐突に現れるハワイアンなコードも微笑ましい。

幻の鍵盤リコーダーは、これまたユルユルな「帝国のマーチ」でも聴くことが出来る。

ビートルズの名曲をカヴァーした「I've Just Seen A Face」ではモノホンのリコーダーの音を堪能出来る。不思議な情感を醸し出す音だ。ちょっと南米のケーナにも似た、懐かしくも切ない音。それでいてハーモニカの様な湿っぽさがない。

2006年のこのアルバム、最近車の中でよく聴いているのだが、「今日は仕事は止めて、どこか田舎道でも走りたいなあ」・・・という不埒な欲望の沸き起こって来る、のほほんな一枚だ。


(*1)栗コーダー・カルテットの知名度とともに復活を望む声が高まり、ついに復刻版「アンデス25F(andes25F)」として商品化された。
http://www.suzuki-music.co.jp/special/andes25f.htm
posted by 非国民 at 00:24| Comment(3) | TrackBack(0) | 音楽;東アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>古今東西の名曲(やや東に偏っている感は否めないが)

うけました。

o(^o^)o


hanayuu
http://www.backtype.com/hanayuu
Posted by はなゆー(北枕のときめき) at 2009年02月07日 05:39
とあるバンドでベースを弾く栗原さんを見たことがあります。大編成で音の嵐を巻き起こすバンドの中にあって、
栗原さん1人だけはニコニコ笑いながら、我関せずとばかりエレキベースを弾いておられました。きっとお人柄なのでしょう。
それはともかく「ハイウェイ・スター」のメロディを「笛」で吹くのは反則ですね。
Posted by やきとり at 2009年02月07日 07:06
そうそう、「笛」がヤバいんです。Mercan DedeやTaksim Trioの時にも思いましたが、笛の音には、人の息、呼吸にダイレクトに通じるプリミティブな魔力があるのかも知れません。ハーメルンの伝説だって、笛だからこそ、「有り得るかも」という気がするんです。のほほんと昼寝してる場合じゃないのかな。
ハイウェイ・スターのメロディは、だからクラリネットでも尺八でもきっと反則なんでしょうが、それにしてもリコーダーは壺でした。
Posted by 非国民 at 2009年02月08日 01:07
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