2008年12月03日

Indialucía

indialucia.jpg
そのココロは、India+Andalucia。

単なる思いつきの企画ではなく、かなり本気と見た。それも、恐ろしいことにインド人が相当本気になっている。

今回の主犯はMiguel Czachowskiなるポーランド人のフラメンコギタリストである。例によって異人の名前は読み方が難しいが、ポーランド人のそれは格別にヤヤコシイ。ミゲル・チャホウスキーとでも読むのだろうか。

「フラメンコのルーツはインドにあり」と悟った彼の、これは求道の記録でもある。アルバムに記載されたクレジットによれば、録音は1999年2月から2004年10月と、5年以上に及ぶ。録音地はインド、スペイン、ドイツ、ポーランド。各地を流浪して数多くのミュージシャンとのセッションを重ねた力作である。

オフィシャルサイトにも力が入っている。何故インド+アンダルシアなのかという由緒由来から説き起こし、参加ミュージシャンのプロフィール、使用楽器、それぞれの楽曲のベースになっているフラメンコ及びインド音楽の説明に到るまで詳細に記されていて、その「本気度」が窺える。

一曲目の「Raag 'n' Olé」から既にインド人が本気になっていて素晴らしい。いまやルンバは辺境音楽におけるリンガ・フランカと化しているのだろうか。ちなみにyoutubeに乗っているのはビデオクリップ用のショートヴァージョンで、シタールのソロが若干端折られているのが勿体ない。ジャジーなピアノを弾いているTomasz Palaは、この曲だけに参加しているゲスト扱いで、アルバム全体ではジャズっぽさは希薄だ。

他の曲もオフィシャルサイトでサワリだけ試聴出来る。

フラメンコのsevillanasとインド音楽のdhunを組み合わせた2曲目の「Nagpur」も良い。ギター、シタール、タブラにストリングスカルテットを配したアレンジは、未知の快楽だ。

5曲目の「Mohabbat Ka Khazana」ではインド〜パキスタンのスーフィー音楽であるqawwaliとアンダルシアの親和性が体感出来る。知らずに聞き流せばフラメンコの歌としか思えないくらいに自然に融合している。

聴けば分かるように、適当に「インドっぽさ」をつまみ食いするのではなく、リズムも音階も相当ディープにインドと取り組んでいる。それでいて、理論が先行したプログレの匂いが一切しないのが嬉しい。かといって力で押し切る訳でもなく、えも言われぬ爽快感が漂っている。

本来フラメンコというのはリズムから全てが始まる音楽だ。新曲が出来る時には、まず最初にリズムが決まり、リズムに合わせて踊りが付き、踊りに合わせて歌が付き、踊りと歌に合わせてギターの伴奏が付く(だからフラメンコの即興性とは何よりも踊りの即興性なのだ)。その点を考えると、シタールの魅力もさることながら、タブラをはじめとするインド人パーカッションを本気にさせてしまったことが、このアルバムの大きな勝因だと言えるだろう。

検索用;Indialucia
Michał Czachowski
posted by 非国民 at 05:18| Comment(6) | TrackBack(0) | 音楽;中東欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
youtubeの「Raag 'n' Olé」見ました。マクラフリンのシャクティにパコ・デ・ルシアが乱入してきたみたいな音楽ですね。
しかもアコースティックながら、マハヴィシュヌのプログレ感もイケイケに匂わせているというか・・・。
スペインとインドが複雑にからみあって、しかも互いに遠慮することなくイケイケに演奏しているのが、
若者らしくてカッコイイなあ。それにしてもシタールの速弾きって初めて見ました!

総括すると私もインドの勝ちだと思います。だってトマトソースとカレーを混ぜたら、出来上がるのはコクのあるカレーですもの(笑)。
Posted by やきとり at 2008年12月07日 23:37
やっぱり煮込んでしまうとカレーの勝ち、ですよね。おそるべしマサラの力。インド人を本気にさせると只では済まないという見本のような一枚です。

しかし、そこからプログレの匂いを嗅ぎ取ってしまう同志は、さすがと言うべきか、やはり修験を積んでおられるのでしょうな。ロックに疎い私は、マハビシュヌをちゃんと聴いたこともなく・・・ヤン・ハマーと組んだジェフ・ベックのインストは持ってるけど、あれってプログレだったっけ。

シタールの速弾きは私も初見です。激しい中にも気が遠くなるような倍音が残って、なんだか津軽三味線を連想します、だから速弾きって言うよりは、むしろ曲弾きに聴こえます。実は歴史的にも同根の楽器なんですが、解放弦を活かした独特の奏法に、何か通じるものを感じます。
ちなみに、稀代の名勝負がyoutubeに転がってました。どぞ。
http://jp.youtube.com/watch?v=ttOrfbqmlDs
Posted by 非国民 at 2008年12月08日 03:58
またしてもヒゲのオッサン! しかも太竿と共演!
しましまあ本物の三味線なのに、なぜか寺内タケシのエレキのように聴こえてしまうのが不思議。珍味ですなあ。
Posted by やきとり at 2008年12月09日 00:44
むしろ寺内タケシに津軽の魂を聴くべきなんじゃないでしょうか。
ちなみに、珍味他流試合の太鼓は仙波清彦師匠。さすがです。
Posted by 非国民 at 2008年12月09日 04:24
うほ〜!!! 萌える!燃える! タブラ、シタール、サロード大好きっ!
 おぼろげな記憶の底の<悪魔くん の主題歌>
(昼間やってた再放送だと思うんだけど・・・?それとも河童の三平と混同してるのか?こっちは夏休みの午前中とかやってたなあ・・・)
聴いた時から気になってる音。ロマ(ジプシー)の音楽とインドって根っこはつながってるっぽいもんなあ・・・。フラメンコとは相性が良いのかも。

ちろの操作がマズイのか、2・5曲目が開けない・・・残念!
Posted by ちろ at 2008年12月15日 16:35
ふふふ、萌えろ燃えろ。
2,5曲目は、オフィシャルサイトから「Tracks」をクリックすると試聴出来るページに入れます。でもただのmp3なんだけどなあ、どうして開かないんだろう。
Posted by 非国民 at 2008年12月15日 21:17
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