2008年06月18日

人を殺す社会

またしても死刑が執行された。人を殺すことで問題の解決を図る社会を、どうしても私は好きになれない。

私たちの社会にとって宮ア勤とは何者だったのか。その答えを知ることも、もう出来ない。彼の行った犯罪行為から学ぶことなど何もない、そう言う人もいるだろうが、私は断じて同意しない。学ぶこと以外のいったい何が、私たちに可能だというのか。

それにしても「粛々と執行させて頂いた」と語る法務大臣の言葉の、何と気持ち悪いことか。いったい誰に対して何をへり下っているのだろう。そこには責任の主体を隠蔽しようという姑息な意図ばかりが垣間見える。こんな時だけ公僕面して、まるでこの殺人は社会の総意によるものだと言わんばかりである。むろんそれは一面の真実であり、私だって自分の手が汚れていないと主張するつもりは無い。だからこそ「執行させて頂いた」という言葉の気持ち悪さは堪え難い。
posted by 非国民 at 07:09| Comment(7) | TrackBack(7) | 死刑と終身刑 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 もはや『問題の解決』って企図すらないんでしょうねえ。

 あるのは
 「まあ怖い」「うわキモい」「信じらんない」「許せない」etc.
 のマスヒステリーだけ。


 それにしても、

 裁判官は法律で決まっている以上、最初から死刑の適用をしない前提で量刑を決める訳にはいかないし、

 死刑の確定判決が出たときに、行政府が恣意的に執行をしないでおくのは三権分立に抵触するだろうし、

 この国で死刑をなくすには『国権の最高機関』であるところの国会の立法活動によるしかないはずなんですが……。

 肝心の立法府がお寒いですねえ。


 ま、「そんな議員、誰が選んだねん?」ってツッコミが入ったら、何とも申し開きのしようがありませぬが。
Posted by もぐら似のY at 2008年06月18日 19:46
もぐら似のYさん
「まあ怖い」「うわキモい」ある意味そう思うのも仕方が無い面はあります。でも、そうした怖くてキモい存在も含めて「私たちの社会」だと考えるのか、殺して埋めて事足れりとするのか、その違いは大きいと思うんです。
Posted by 非国民 at 2008年06月19日 00:40
 『死刑』や『刑罰』についてというより、『私たちの社会』をどんなものにするか、というグランドデザインから熟考と議論が必要だと思うんですが……。

 聞こえてくるのは『犯人の残虐さ』や『人権』やらについての感情論と言い争いばかり。

 「おい、何かいい方法がないか考えてみようぜ」というのが民主主義の醍醐味なんですけどねえ。
Posted by もぐら似のY at 2008年06月19日 12:23
>「おい、何かいい方法がないか考えてみようぜ」
まさしくそれが、私たちがこの国の主権者として生きるということなんでしょう。そもそも私たちに主権があるというのはどういうことなのか、(何だか書いてて情けなくなってきたけど)もう一度そこからじっくりと考える必要がありそうです。
Posted by 非国民 at 2008年06月20日 00:21
たぶん鳩山さんは、珍しいチョウチョにムシピンを刺すのと同じ感覚で、命令書にハンコを押すのでしょう。たぶん同じ右手でポンと刺したり押したりすると。
あの人の顔と物言いをテレビで見る度に、たとえば貴乃花親方の目付きに似た、何かに憑かれた人と対峙した時のような絶対に縮まらない距離を感じて虚しくなります。
Posted by やきとり at 2008年06月20日 23:58
>同志
殺人によって問題の解決を図るという意味において、戦争と死刑は同根だと思うんです。いみじくもYさんが「マスヒステリー」と評した通り、そこには何かが取り憑いているのかも知れません。
Posted by 非国民 at 2008年06月21日 00:34
とおりすがりで失礼します。

鳩山法相の言葉、「正義」がとても白々しく聞こえる、というより、
彼が言うと怒りがこみ上げてきます。

「正義」を愚弄するなと。

この世に絶対的正義は存在しない。
善と悪の中間で揺らめく正義は、常に「価値観」を基に形作られる、相対的正義のみ。

そして、本来「感情・感傷」を持ち込んではならない「法律」に自己満足的に持ち込む。

正義は自分ではなく他人が決めること。
それを持ってはならない立場の人間が身勝手にそれを騙るな と。

正義(民主主義で言えば最終的には国民)が歪めば公権力も歪む。
歪んだ公権力からこれまでの歴史の中でどれだけの悲劇・惨劇が繰り返されてきたのか、
これまで学んできた歴史を振り返れば誰でもわかること。

その恐怖にさえ気づかず、現在の死刑制度を安易に、
かつ当然のごとく受け入れられるような人間がいること自体、驚きを禁じえない。
Posted by とおりすがり at 2008年06月21日 03:06
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