
あまりにも叙情的なキューバン・ボレロ夜想曲。
ジャズベーシスト、チャーリー・ヘイデン2001年の傑作。
これと言って新しいところは何も無いアルバムだが、全編から芳醇な香りが沸き立っている。こういうことをやらせると、チャーリー・ヘイデンは本当に凄い。かつて「Song for Che」を書いた彼の、キューバに寄せる想いが熱く伝わって来る一枚だ。
ごくごく古いスタイルのキューバン・ボレロ(バラード)である。収録曲の中にはメキシコの歌なんかも入っているけど、全然気にならない。熱帯の夜の湿った空気が、どこまでもロマンティックに流れている。これぞ大人の音楽って感じなのだ。
全曲に参加しているゴンザロ・ルバルカバGonzalo Rubalcabaのピアノが実に渋い。自分のソロ作品では、いささか「弾き過ぎ」の感が否めないルバルカバだが、ここではしっとりと抑制の利いたピアノを弾いている。手抜きと言えば言えてしまうほどに控え目なシングルノートを繰り出しつつも、その磨き抜かれた音色の美しさはさすが。
他にも、曲によってギターやサックス、ヴァイオリンなどが入っているが、どれもこれも落ち着いた静かな演奏に終始している。各人のソロも、アドリブという風ではなく、ただただ美しいメロディを美しく弾いている感じだ。ほとんどドラムは入らず、最小限のパーカッションが気怠いリズム支える。1曲だけ参加のギターは盟友パット・メセニーPat Metheny。ヴァイオリンはフェデリコ・ブリト・ルイスとでも読むんだろうかFederico Britos Ruiz。知らない名前だけど、彼のヴァイオリンがまた実に良い。秘めたる熱き想いを、甘く流れることなく出し切っている。その何と美しいことか。
あくまでも淡々と、音数少なく。それでいて、アンサンブルにスカスカな感じが全く無いのは、やはりチャーリー・ヘイデンのベースが凄いのだろう。ゆったりとした中にも濃密な時間が流れている。曲目に関しても、特にこれが、というような印象の強い曲は無い。むしろ全曲が極上なのだ。アルバム一枚が全部スローナンバーというのは、よほどの名手でもダレてしまうものだが、この作品に関しては最初から最後まで一貫した叙情に満ちていて、それがかえって心地よい。
Verveのサイトで、ちょっとだけ試聴出来ます。
http://www.vervemusicgroup.com/artist/releases/default.aspx?pid=9890&aid=2808
まさしく珠玉の夜想曲。
夜の帳に覆われた大人の時間、ひとりで落ち着いて聴きたい一枚だ。
このアルバムがあればツマミは要らない。
この独特な空気感ってなんなんでしょうね。
こないだぼくんち↓
http://blog.livedoor.jp/jabberwock555/archives/51231426.html
で紹介したMiriam Ramosなんかともろ、世界がダブるつーか、共演したことがないはずがない、という感じだよな〜。この音楽の豊穣は、社会主義国家でも、南の島ではこういう空気になるということなのでありますか。