2008年02月21日
忘れ得ぬ音
歯が割れる音を聞いたことがありますか?
私は、ある。
2本目の親知らずを抜かれた時のことだ。
当時私は、右下7番の大臼歯が末期の虫歯になり、抜髄治療を受けていた。抜髄。ばつずいと読む。俗に歯の神経を取るというやつですね。歯医者の用語はどうしてかくもイタイタシイのか。
治療の最初の方で、医師が私の口中を隈無く観察して方針を呟く。助手の人が横で記録して行く。その際に「8番、えきすと」という言葉が聞こえて、即座に「ああこれはヤラレルのだ」と私は察してしまった。extractionなんて単語は知らなかったのに、なぜ一瞬で理解してしまったのか、自分でも不思議である。
さて、医者の言うことには、この8番(つまり親知らずですね)が後々治療の邪魔になるらしい。7番の抜髄で歯冠を大きく削るので、そのタイミングなら抜きやすいし、逆に7番のクラウン被せが終わってしまうと非常に抜き難いとも言う。色々と理由を並べるが、とにかく、この親知らずを抜くことは既に決定事項らしい。
私はと言えば、とにかく虫歯になった7番が痛くて、何も考えられない。
日頃の行いのせいか、7番の治療は難航し、親知らずを抜きましょうという話になったのは2ヶ月くらい後だったと思う。
レントゲン写真を見ると、実に立派な親知らずが真横に鎮座している。水平埋伏智歯と呼ばれるやつで、見えるところには全く露出していない。こんなの、どうやって抜くんだろうと思ったが、やはりそのままでは抜けないらしい。歯茎を切開し、水平に横たわった親知らずを2つに割って、その欠片を片方ずつほじくり出すのだそうだ。話を聞いて気が遠くなる。
医者は平気な顔で「◯曜日がいいですね。外科の専門医がいる日でないと・・・」とさらに決定的な追い討ちをかける。なんてことだ。まるっきり手術じゃないか。
というわけで、歯を割られました。
完璧に局麻が効いているので、全く痛みは感じない。が、音が聞こえる。
きしきしきし.みしみし...ぐが.....ぼりっ
ああこれが巷で評判の骨伝導(当時そんな携帯電話が売り出し中だった)ってやつかと、意識の片隅でぼんやりと考えていた。
忘れ得ぬ音である。
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TB送っといて私から言うのもなんですけど、どうして読んでしまったんですか。
よせばいいのに・・・
SIVA大師は股間が漆かぶれの苦行に耐えたというし、
非国民兄は奥歯割の拷問に耐えたというし、
アマゾネスの虜囚には苦痛に耐える胆力が必要不可欠なのでしょうか?
俺はイタイの苦手なんでカンベンですううううううう;;;;;
痛くないんですよ麻酔が効いてるんで。
だからこそ「音」が記憶に残っているのかも知れません。
すごく近くで聞こえます。
ひゃあー。痛いでしょそれ。
時にわたしも全く同じ目にあったことあります。
同じく横向きに成長した親知らずを抜歯するのにノミと金槌のごとき道具にてこんこんされました。歯が割れる時のちょっと湿り気を帯びた「ばき」という音は忘れられません。なんか歯茎で鳴ったというより顎に響いた感じの音でした。さらに歯のかけらが取り切れず後日おたふく風邪のように顔が腫れ上がり激しく痛んだので再度切開して欠片を取り出して貰ったのですが、切開に電気メスを使ったものですから「ああ、歯茎の焼ける臭いはスルメを焼く時のにおいと同じだなあ。」と形而下的な人間の存在を実感いたしました。
もうひとつ。
今日私の乗った一本前の電車に投身してしまった方がおられそのために電車の中に長時間閉じこめられたのですが、ようやく運転を開始し当の駅のホームに止まったとき係の人が中身の透けてみえるビニール袋を下げているのが見えました。投身した人の冥福を祈ると同時に、人間って肉なんやなあ、とつくづく思いましたよ。(でもホームに血まみれの割り箸を放置するのはやめて欲しい...。)
どうしてここに書くんですか!
ああそうですね私が悪うございました反省してます(泣)
「自分の肉が焼けるにおいをスルメのにおいと表現した漢」
「人間は肉」
さ、さすが修行を積んでおられる・・・南無阿弥陀仏
非国民兄、痛くなくても痛そうなのはダメなんですグロいのはダメなんですーー!!
ああ、ホラー映画を見るような心境。(怖いのに見ちゃう
後処置でかけらを取り除いてもらってる最中に麻酔切れ,とか,
歯茎を縫合してもらったはいいが,痛み止めの処方を待つ間に再び麻酔切れ,とか,
傷が癒えてきたところで,差し歯を支えるための土台を上顎骨にねじ込むときの音,とか,
書こうかな,と思っていて出遅れました.自重します.(←してないしてない)
すべて実話ですが共通要素としてある程度以上の衝撃には神経ブロックがかかるのでヤッタ直後にはさほど痛くはないのでした。
ああそうでした私が悪うございました(再泣)
でも私は「音」の話しか書いてません.以後、直裁に「痛い」話は禁止します。
もぐら似のYさん
私、親知らずを抜かれた晩にプリンを食べて、この世の終わりかと思うほどの激×に見舞われました。あれは何だったんでしょう?
manetさん
指は私も怪我して医者に縫われたことがあります。この時も局麻が効いてて痛みは無かったんですが、ハサミで糸を切るパチンという音が妙に印象的でした。
しかしまあ頬骨軽陥没とわ。普通そのくらいまでヤッテしまうと逆行性健忘が働くもんなんですけどねえ。
(で、なぜこのエントリーにコメント書いている?)
私、非国民さんと同じ治療をされかけたことがあります。
奥歯の歯肉がはれて細菌感染といわれたのですが、埋もれている親知らずを抜けば、今後、感染しにくくなるでしょう、とのこと。
X線写真を見せられて、「ここです、ここ。歯茎を切り、親知らずを2つに割って片方ずつ取り出します。難しい手術ですが、まあ大丈夫です! やってみましょう!」
と嬉々としていわれました(絶対うれしそうだった!)
でも、実は歯肉の腫れているのは親知らずより2本手前でした。
手術予定の日、おそるおそるそれを指摘すると、
「…あ、ほんとだ! でも抜く?」
「けっこうです!!!」
こうしてワタクシはいまでも親知らずを抜かれなかった喜びをしみじみと奥歯でかみしめております。
(あー、抜かれなくてよかったよー)
いらっしゃいませ。かような僻地へようこそ。
しかしまあ何と心安らぐコメントなんでしょう。羨ましい限りです。
私は既に3本抜かれてます。自慢じゃありませんが、親知らずのネタで飲み明かせるくらい修羅場をくぐって来ました。
歯を抜かれると、しばらくはポッカリと穴が空いた状態になり、ご飯粒が入って大変なんですよねえ。