
燃えるスカ爺。
スカタライツ。1963年ジャマイカにて結成。世界最初のスカバンドである。スカタライツ以前にスカという音楽はこの世に無かったのだ。その活動は今や伝説でさえあるが、わずか3年後の1965年に解散。80年代に再結成を果たし、高齢化によるメンバーチェンジを繰り返しつつ現在に至っている。これは1997年に録音された傑作である。ちなみに、この時点で残っているオリジナルメンバーは、ドラム、ベース、テナー、アルトの4人。
もちろんスカ道を極めるには60年代の録音を聴くべきなんだろうが、なにしろブート盤が出回り過ぎていて、どこから手をつけて良いのか分からない。加えて、年代相応以上に録音状態が悪い。だから、浅く広くが信条の非国民は、このへん行っときましょう。
演奏スタイルは往年といささかも変わっていない。リズムは、これぞスカ。2&4拍に強調されたコードが入る。ドラムは半開きのハイハットでシンコペーションを取りつつ、3拍にスネア。
構成は、全員でテーマを弾いたあと1コーラスずつソロを廻し、最後にまた全員でテーマ。実はこれ、ジャズの典型的なスタイルなんである。コード進行こそ簡略化されているが、ソロの節回しもジャズのイディオムに則っている。それもそのはず、そもそもスカタライツは腕利きのジャズマンを掻き集めて結成されたのだ。スカという音楽自体がジャズのフォーマットを踏まえた上で成立していると言って良い。だいたい編成がジャズバンドと一緒だ。
そんなオールドスタイルのスカを、クリアーな音質で聴くことが出来るのだから、それだけでもこの一枚は買いだ。ヴォーカルが入らず全編インストというのも良い。
曲目も渋い。一曲目は、おなじみの「James Bond Theme」。そして「Latin Goes Ska」「Occupation」「Rock Fort Rock」、タイトルナンバーの「Ball of Fire」「Ringo」などなど、これぞスカタライツ!という懐かしき名曲が並ぶ。ちなみに「Ringo」は、あの「リンゴ追分」である。どうしたわけか、スカ界ではスタンダードナンバーなのだ。ロンドン・スカの猛者トロージャンズThe Trojansもレコーディングを残している。
ラストナンバーは、ジャマイカの独立を記念して作られた永遠の名曲「Freedom Sound」。これがもう何度聴いてもカッコいい。
ちょっと時代はずれるが日比谷野音でのライブをリンクしておく。
ジャケットからして暑苦しい一枚。冬に聴くのもまた一興。
スカと言えば、マッドネスとかスカパラとか「ンチャ・ンチャ」と渇いた軽いリズムにいまいちピンと来なかったもんですが、
スカタライツは「モッサ・モッサ」とやたら湿っぽいというか重いというか、ルーツ・スカ(?)はそれなりに説得力があるなあ
と思ったもんでした。YouTubeは、若手メンバーのキビキビ感と、フロントのルーズ具合の対比が面白いですね。
例えて言えば、「譜面を放棄して一斉にデモ行進を始めたブラスバンド」みたいな感じ?
私には「スウィングを放棄したバップ」みたいな感じに聴こえます。
そんでもってリンゴ追分面白そうなので探したらありました。
http://www.youtube.com/watch?v=9osfCKkKuX0
どういう伝播経路を経て定着したんでしょうね?インドに大正琴が伝わってなぜかバンジョーという名前で定着してしまった経緯と同じぐらい興味あります。
それにしても、どういう伝播経路なんでしょうか。私にも不思議です。誰か知ってたら教えて下さい。
スカタライツは60年代からこの曲を演奏しています。どうせ版権のこととか何も考えずにやってたんでしょう。ちなみに美空ひばりのリンゴ追分は1952年。バックで演奏してるのは東京キューバンボーイズです。この頃の日本の歌謡曲って、けっこうラテンのリズムが入ってたりしますね。ジャマイカのジャズマン達は、何か近いものを感じたんでしょうか。
ひょっとしたら日本から直接ジャマイカに伝わったんじゃなくて、誰かアメリカのジャズマンあたりが演奏してたのが取り入れられたというこの可能性もありそうです。