2007年02月20日

Cocteau Twins【Four-Calendar Café】

Four-Calendar_Café.jpg
夢幻の美、その極地を知る一枚。

私がコクトー・ツインズの音楽に出会ったのは、忘れもしない1988年であった。何故忘れないかと言えば大学に入学した年だからだ。深い意味はない。今は無き六本木のWAVEで、いつものように輸入版のLPを漁っていた私は、ふと【Blue Bell Knoll】の不思議なジャケットに惹き寄せられたのである。たしか「ニューウェーブのなんたら・・・」みたいな解説が付けられていたと思う。なにせ時代はまだLPであるから、店で試聴なんて出来ない。気になったモノは買うか買わないかの一発勝負なのだ。そして、ニューウェーブが何なのかも分からない私は、ついふらふらと、そのアルバムを買ってしまったのである。
家に帰ってさっそく針を落とす。一曲目のタイトル曲「Blue Bell Knoll」にまず度肝を抜かれた。「なんじゃこりゃあ」である。これは凄すぎる。

ジャズ、タンゴ、MPB(Musica Popular Brasileira)と遍歴しつつも何故かロックと無縁に育ってきた私にとっての、少々大げさに言えば、これがロック原体験なのかも知れない。ズレてるなあ。ちなみにTom WaitsやIan Duryにハマるのは、もう少し後の話。

以来、20年近くもcocteau twinsを聴き続けてきた。
【Blue Bell Knoll】は間違いなく傑作であり、今でもその思いに変わりはない。とは言うものの、このアルバムは全編これ「耽美の極北」であって、それだけに聴く方にも相当の気合いが要る。くつろいだ時間のBGMにでも・・・という安易な消費の仕方を許さない「美」の厳しさに圧倒されるのだ。

というわけで、今回紹介するのは【Four-Calendar Café】。1993年の、これまた傑作である。
適度に緩く、リラックスした雰囲気を持つ作品だ。テンポのゆったりした曲が多く、すっきりしたメロディラインと柔らかめの音色が特徴的だ。それでいてCocteau Twinsのスタイルには微塵の揺らぎも無く、どこまでも美しい。澄み切ったElizabeth Fraserのヴォーカルは、エフェクトを多用しつつも透明感に満ちたサウンドと相俟って、聴く者を夢幻の境地へと誘う。
例えば「Evangeline」の何と美しいことか。
彼らのアルバムはどれもそうだが、このアルバムにもハズレ曲というものが一切無い。一曲目「Know who you are at every age」の最初の一音からラスト曲「Pur」の余韻まで、ただただ美に溺れる快楽に浸るばかり。

心身ともに疲れ切った仕事の帰り道などに、よく車の中で聴いている。都会の煤で汚れきった心が洗われる一枚である。

検索用:Four-Calendar Cafe
posted by 非国民 at 07:06| Comment(16) | TrackBack(0) | 音楽;西欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なにが衝撃的かって、非国民さんが自動車免許をもっていることですね。
バランスの悪さでは、私と同等の方だと信じていましたから。裏切られた気持ちです。

私は、免許をとったら離婚だといつも「美しい妻」(固有名詞)に言われています。
Posted by jabberwock at 2007年02月20日 08:34
何だか君が普通の人に見えるぞ!
Posted by 黒木 at 2007年02月20日 09:55
jabberwockさん
残念でした。私、バランス感覚は優秀な方だと自負しています。
トラックの運転だって平気です。裏切り者ですいません。

黒木さん
たまには普通の人っぽい一面があっても良いじゃないですか。
Posted by 非国民@深谷 at 2007年02月21日 00:42
「カウンター」からロックに入ったというトコは私も同じです。昔、友だちが正論的にロックを語るのを聞いて肩身がせまい思いをしてました。
「ジャンル分け」はくだらんのですが、逆説的に言えばロックもしょせんジャンルのひとつですし。
ところで私はその頃、池袋のWAVEに入り浸ってましたよ。当時は明治通りを新宿方面に下った所にタワレコがありました。
Posted by やきとり at 2007年02月21日 23:57
やきとりさん
当時は輸入版を入手出来る場が本当に限られてまいしたからね。
LPの頃は、輸入版も安くはなかったので、なかなか大変でした。
やきとりさんのロック原体験も一度聞いてみたいです。
Posted by 非国民 at 2007年02月22日 10:21
私は真っ正面からロックに入りました。今でも正統派のロックンローラーです。
Posted by 黒木 at 2007年02月22日 10:52
黒木さん
開き直ってませんか?
Posted by 非国民 at 2007年02月22日 20:54
紹介されたYouTube聴いて(観て?)、思わずこのアルバムを買ってしまいました。
すごいいいですね。
非国民さんのお好みの音楽は、僕にとっては新しい世界を拡げてくれます。
取捨選択してますけど (^_^;)。

いい出会いをありがとうございました。
(cocteau twinsとのですけど♪)
Posted by アキラ at 2007年02月23日 11:42
>開き直ってませんか?

はい、他にやることがないので。
Posted by 黒木 at 2007年02月23日 11:45
アキラさん
>新しい世界
そう言って頂けると、こちらも張り合いがあります。まあ、私も相当偏ってますから、取捨選択は必至でしょうけど。

黒木さん
はい、安心しました。
フランク・ザッパが真っ正面だとか、マグマが正統派だとか言われたらどうしようかとドキドキしてました。分かってるんなら結構です。
Posted by 非国民 at 2007年02月23日 23:52
残念でした。私がロックに入ったのはBlack Sabbathが最初です。中2くらいのとき。真っ当だね。
Posted by 黒木 at 2007年02月24日 23:30
今日からフランスに行ってきます。

ところでBugel Koarというブルターニュのバンドをそのうち日本紹介しようと思っています。その節はどうかごひいきに。
Posted by 黒木 at 2007年02月25日 08:18
マグマ、かあ(懐)
高校の時買いました。が。あの宇宙語のオペラロックは、頭が痛くなって、理解を断念してしまったなぁ。

まだ「レコード」もっているはずだけれど、いま聴いてみたら案外おもしろく聴けるかも、iTunesで探してみよう。

というわけで、
黒木さん、行ってらっしゃいませ。当家にいただいたコメント放置しっぱなしで、こんなところで遊んでいて、すみません。

よい旅を。
Posted by jabberwock at 2007年02月25日 09:30
黒木さん
Black Sabbath、かあ・・・
私はカーディガンズのカバーでしか聴いたこと無いんだけど、真っ当かな?
Posted by 非国民 at 2007年02月26日 00:26
真っ当です。

おぉ、パリでネットが出来るとは思わなかったぜ!流石近代都市!!
Posted by 黒木 at 2007年02月28日 00:32
jabberwockさま、

気にしないで下さい。僕はとっても気が弱いので、jabberwockさんみたいな人と論争なんてことになったら、がくがく足が震えてしまいます。せいぜい極悪非道非国民さんのところで余生を送らせて頂くのが唯一の楽しみです。
Posted by 黒木 at 2007年02月28日 01:12
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