
ケイト・ブッシュ、12年ぶりのアルバム。至福の二枚組である。
今さら説明するまでもない独自の世界。変わってないんだなあ、これが。
12年というブランクを思えば、この「変わってなさ」は奇跡的だ。前作【The Red Shoes】の最後の曲 You're the One(ジェフ・ベックのギターが印象的な余韻を残す)から、この【Aerial】へと、何の違和感もなく繋がるのだ。
強いて言えば、ちょっと尖っていた前作よりも、しっとりした柔らかい音作りになっている。アコースティックな楽器を多用したアレンジは、どこまでも澄み切った音で、それがまた彼女の希有なヴォーカルを絶妙に支えている。よく聴くと結構複雑なコードを使っていたりするんだけど、全くそれが邪魔にならない。
ビッグネームをゲストに迎えた前作に比べて、かえってまとまりのある仕上がりになっているのではなかろうか。二枚組でありながら、拡散した印象は微塵もなく、一貫した美しい世界がそこにはある。
特に「A Sky of Honey」と題された二枚目が素晴らしい。
曲間あるいは曲中で繰り返し挿入される鳥の声によって統一されたイメージを持続しつつ、ラストに向かって一気に飛翔して行く見事な構成で、この一枚を通して聴かせる作品になっている。そして圧巻のラスト曲は、唐突にすーっと終わってしまうのだ。冒頭同様の静かな鳥の声を微かに残して、まるで虚無の彼方へ消え去る様に。
呆気にとられた私は、何がなんだか分からぬうちに、再び一枚目の「A Sea of Honey」を聴き始めてしまう。
ばぶーしゅかっ!!とエキセントリックに歌っていた頃の、研ぎすまされた刃物の様な狂気とはまた違った、それでいて、ケイト・ブッシュでしかあり得ない一つの世界。
それは空気の様に拡散する、静かな静かな世界であった。
これと言って派手なところの無い、実に地味な作品。
それでいて、何度聴いても飽きる事が無い。
至福のアルバムである。
Official Siteでちょっと聴けます。
「嵐が丘」とか「James and the Cold Gun」とかよく聴いたなぁ。
しかし、ふと気がついたら、LPでしか持ってない私はCDを聴くことができません。iTunesで見たら、あるんですね>ファースト。
ニューアルバムではなく、こっちの方を買いたくなった。ダメ?
デビューアルバムはもちろん傑作なんですが、これはまあ、今さら私が書くまでも無いことでして。
私もLPでしか持っていないので今聴くことは出来ませんが・・・「嵐が丘」も懐かしいですね。
あらやだ知らなかった。いや、その曲は当時何度も耳にしてて佳曲として鮮明に記憶に残ってますが、あれもKate Bushだったんですね。言われてみれば、確かにあの声はそうだ。うん。
そして話はやっぱり「嵐が丘」へと戻っていくんですね。
今回の「Aerial」、良いアルバムなのは間違いないんですが、彼女の最高傑作なのかと言えば、正直私も違うと思います。例えば、初めてKate Bushを聴く人にまずAerialを聴きなさいと勧めることは無いでしょう。むしろ、「あの」Kate Bushを知ってる人に、今聴いて欲しいアルバムとして紹介した次第です。
はじめまして。
私はいまだにダウンロード購入というやつに馴染めません。どうも「物欲」を満たさないんですよね。まあ、それ以前にヘッドホンで音楽を聴くのが嫌いでして、実はウォークマンの類いを一度も持ったことが無いんです。
そんな旧式人間ですが、宜しくお願いします。