2006年06月21日

「あいつを殺せ」

このところニュースを見る度に、もやもやと引っかかるものがあったのだが、その違和感をやきとりさんがすっきりと書いてくれた。

   もの言う被害者(謙遜と謙譲の音楽)
各局のテレビカメラを集合させた場で、結局「あいつを殺せ」という号令をかけ続ける鋭い眼光。


そうそう。私が引っかかっていたのも、まさしくその点なのだ。
延々と流れてくるのは、要するに「あいつを殺せ」というメッセージ。

何歩か譲って、遺族が、そのような思いを抱くことは理解しよう。
だが、そのメッセージを、そのまんまメディアが増幅していてどうするのか。
ましてやそれが、事件を物語として消費しようとする浅ましい欲望に基づいているのだとしたら、これほど不愉快なことは無い。
私も、あなたも、ニュースに接する度に「消費者」として、その浅ましい欲望に加担してしまうのだから。
posted by 非国民 at 00:58| Comment(18) | TrackBack(5) | 死刑と終身刑 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
昨今の犯罪報道なる物を見るにつけ、まったくユーウツになります。
判事は全員一致で「差し戻し」を支持したそうです。
ニュースもおおむね判決を評価しているようだし。
何だかみんな同じことを言うようになったなあと、一夜明けた今日のニュースを見てさらにユーウツになるのでした。
Posted by やきとり at 2006年06月21日 18:47
ですねえ。。。
ニュースの内容が、では無くて、ニュースに接する事自体が不愉快です。事件を「物語」として消費する扱いこそが、何よりも死者に礼を失することだと思います。
Posted by 非国民 at 2006年06月21日 23:22
は、トラックバックがいかないの忘れて、すっかりトラックバックした気になっていた。
タグ、利くんですよね?

遺族の被害感情

さっそくウチのほうには、「ニセ非国民」が現れております(笑)
Posted by ゲスト at 2006年06月22日 08:49
相変わらすlivedoorからのTBは受けないんです。本当にすみません。お手数かけます。
それにしても随分と出来の悪いニセでしたね。
鬱憤ばらしに、そちらのページを荒らしてみました。
Posted by 非国民 at 2006年06月22日 16:29
はじめまして。私はこの事件の死刑支持ですが違う話で。
メディアリテラシーと言いますか、報道機関の恣意性や扇動性に対して一定の抵抗力を持った方々、つまり御サイトのようなブログによる表明とブロガー同士の議論は、これからの日本のネットジャーナリズムにおいて重要なファクターとなることと思います。
それでは今後のご活躍を期待しております。
Posted by ゲスト at 2006年06月22日 18:35
蚊さん、はじめまして。
そちらも読ませて頂きました。
私たちの社会が、どうしても「合法的な殺人」を必要とするのであれば、それは、残念だけど仕方がない事として、社会全体でその後ろめたさを共有するしかないのでしょう。
よってたかって石を投げるのではなくてね。
そして、どのような場合(に限って)合法的な殺人が認められるのかの判断を、当事者遺族の思いとは離れた地平で裁判所に委ねるというのも、考えられる中では最も妥当な選択でしょう。
ただ、個別の事案について冷静に議論するというのも難しいもので、本文に書いたように、何かと後味の悪い思いが残ります。
私が、原則としてリアルタイムの刑事事件に言及しないのは、それが嫌だからです。
Posted by 非国民 at 2006年06月22日 19:10
非国民さん、TB受け付けられなくて申し訳ありません。

水葉さんのところでもコメントしたんですけど、死刑も終身刑もそれほどの苦痛じゃないですよ、たぶん。それよりシャバで生きて死ぬ我々のほうが相当苦しむんですよね。

どうも「どうだ怖いだろう」って死刑を求める人たちの姿が、全然効かないプロレス技かけて「痛いだろー!参ったかー!」とご満悦みたいに思えてしょうがないんです。もしもし、技かけてるあなたのほうがいずれもっと痛い目に遭うんですよ、と。

なんだろう、その程度の想像力しかないのに、さも遺族感情をわかったような気になるなよー、と言いたいんです、わたし。死刑推進派の皆さんからは真意は全然ヌルーされてますけど(笑)あああ悲しい!
Posted by ゲスト at 2006年06月23日 11:55
まあ確かに、ワーストブログインジャパンの珍風さんがミもフタも無く書いている通りで。
http://worstblog.seesaa.net/article/19527391.html
それにしても死刑などというものはあっけないものです。(中略)滞りなく吊り落としてみれば何ということはありません。たいていの場合あっさり死んでしまいます。(中略)人の生命の儚さを知ることが遺族にとって些かの慰めともなろうかというと、全然そんなことはないんで、即死したりしようものなら怒りだす遺族もいるでしょうな。

同じ苦痛を思い知らせるのが正当な報復だというのなら、妻子を殺された者は、犯人の妻子を殺すことになるのでしょうが、それで何が残るのかは見当もつきません
Posted by 非国民 at 2006年06月23日 23:43
僕もTBさせていただきたかったんですが、ダメみたいでしたので、これをお願いします。
気になってしょうがないこと

非国民さんとやきとりさんの記事を読んで、焦点が合った感じです。
Posted by ゲスト at 2006年06月24日 00:18
北国はスパム対策のため、ライブドアブログからはトラックバックできないようですね。
Posted by ゲスト at 2006年06月24日 22:07
それは「対策」と呼ぶに値するんでしょうか?
早いとこ、どうにかして下さいよ、さとうさん。
Posted by 非国民 at 2006年06月25日 01:26
●Fei Guominさん

個人的には死刑制度は報復の連鎖を象徴する制度として理知的国家にあっては成らざる制度だと思っています。被害者の権利については死刑制度とは別に語られるべきことだと思うのに、今回一緒に論じられているのが違和感の原因ではないかと個人的には思っています。いずれにしても死刑制度にしても被害者権利についても、たいした論考が施されずに報道されています。もはやアナウンサー等による素人のコメントはいらないというのが本音です。

<お返事>
DjavanがMPBとの出会いでしたかぁ。日本では「SAMRAI」の曲名もあってかDjavanはとても人気ですよね。あの頃のエレクトリックピアノの音作りはとても好きです。
Posted by ゲスト at 2006年06月25日 20:12
日向葵(ponty) さん
そうなんです。なんで一緒に論じられてしまうんでしょう。現行の制度において被害者(あるいはその遺族)の権利が軽視されているのは、その事自体が問題なのであって、だから被告人の権利はどうでも良いって話にはなりません。だって、ぜんぜん関係ないんだから。

Djavan、良いですよね。私は最近の作品も好きです。今夜は【Milagreiro】でも聴きましょ。
Posted by 非国民 at 2006年06月26日 00:24
こんばんは。死刑について少し書いてみたのでTBを送らさせていただきました。ただ、TB欄になぜか全文が表示されているのですが、これはそういうものなのでしょうか・・・?
Posted by ゲスト at 2006年06月27日 23:33
バイリニアさん、こんばんは。
>TB欄になぜか全文が表示されている
はい。これはそういうものなんです。 バイリニアさんに限らず、gooからのTBは全文が表示されることになっています。理由は分かりません。
こちらからもTBさせて頂きます。
Posted by 非国民 at 2006年06月29日 01:54
 おっしゃる事はよく理解できます。ただ個人的には今まであまりにも被害者遺族の心情に関する法的配慮が少なかった時期が長く続いたので、今は逆側に振れている時期のように感じております。これが一定の位置に落ち着くまではまだ長い時間を要する気がします。
 愛する家族をあんな残虐な方法で殺されれば、だれでも復讐心が出て当然です。ましてやあんな漫画にしか出てこないような弁護士が登場してくれば、メディアがそれをわかりやすい二極対立に仕立て上げるのも簡単でしょう。問題はそれを物語として消費してしまう我々の側にも確かにあると思います。
 ただそういったことを認めた上で、被害者遺族が「あいつを殺せ」というメッセージをメディアを通じて散布しているかのように捉えるのもちょっと酷かな、と思いますし、そのことで「我々の社会をどうやって守るべきか」という重い問題の焦点がずれてしまうように感じるのも事実です。
Posted by ゲスト at 2006年07月04日 18:25
飛び込みゲストさん
それも良く分かります。
私自身、本村さんを咎める気持ちは、あんまり無いんです。身内を奪われた者に対して冷静になれというのも酷な話ですし、場合によっては無理な話です。
だからこそ、メディア(とその受け手)が冷静でなきゃダメでしょう、ということを書いたのでした。

>「我々の社会をどうやって守るべきか」という重い問題の焦点がずれてしまう
これは確かにそうですね。
そもそも、「我々」の範囲はどこまでなのか、ということが、この上なく重い問題です。
残念ながら、天をも恐れぬ極悪人というのはやっぱりいるわけで、それも含めて「我々の社会」なのだとすれば、簡単な話では済みません。
Posted by 非国民 at 2006年07月05日 02:03
山口母子殺害差し戻しの件はマスコミの仕業と聞いています。少年の家庭環境が悪かったことや18歳だったことは十分情状酌量の余地があると思っています。2人以上の殺人と言ってもたまたまそこに2人いてしまった。連続殺人と初犯では違うと思っています。だからと言って数年で出所は許されないと思いますが。
大きな犯罪や事件は不幸や不運から生まれています。不幸や不運な人が増えている世の中、不幸な人をなくすこと、情状酌量の余地について考えることが犯罪を呼ばないためには必要なんじゃないんでしょうか。
Posted by ゲスト at 2006年07月06日 20:51
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