
フィリピンはミンダナオ島の天空に棲む孤高の歌神、グレース・ノノ。地上で浮かれていると、その姿は見えないとも伝えられる。1995年の傑作。
何とも御大層な経歴である。
ミンダナオ島南部のブトゥアン生まれ。幼少より西洋のロックやジャズに親しんで育つ。ハイスクール時代には、国際演劇センターで演劇を学ぶ。フィリピン大学では人文科学、大学院修士に進んで人類学と教育学を専攻。ミンダナオ島でのフィールドワークの後、再びフィリピン大学に戻ってアジア音楽を研究したそうである。
現在は、歌手、作曲家、音楽プロデューサーであるばかりか、アジア・アーツ・ワークショップの主宰であり、TAO文化芸術財団の代表でもあるという大変な人なのである。
しかしながら、経歴だけを見て、頭でっかちのインテリによる理論先行ヒョロヒョロ音楽を予想した人は、ひとり残らず、このアルバムの前にひれ伏すことになる。
特筆すべきは、とにかく彼女の“声”の力であろう。
楽曲はどれも非常に良く出来ている。
伝統楽器に加えてドラムやシンセ、エレキギターを多用したアレンジメントは、このうえなくモダンかつポップである。
そしてなお、華麗な経歴も洗練された楽曲群も、その全てを些細な事として退けうるほどに圧倒的な説得力を持つ彼女の歌声が、そこにある。
ここで展開される音楽世界は、上手いとか声が良いとか、そんなレベルから遠く隔絶した領域にある。まぎれもない美しさに充ちながら、美しい、と単純に形容する事さえためらわれるパワーがある。それはおそらく、強烈な個性と壮大な哲学との混然によってこそ根拠付けられているのであろう。
その表現力は、例えばビリー・ホリデイ、エディット・ピアフ、あるいはアマリア・ロドリゲスに並ぶ20世紀ポピュラーミュージックの最高峰をなすと言っても過言ではあるまい。
参考サイト
http://www.gracenono.com/
Grace Nonoで検索してたどり着きました。
というのも「OPO」をとある知人の好意で
漸く聴かせて貰っているのですが、
その声に圧倒されてしまったものですから。
Tao Musicのミュージシャンでサンプルを
聴けるのは私が知る限りではPinikipikan
ぐらいでは、思うのですが、彼女もサンプル
音源公開すればもっと知名度高くなると思い
っております。もったいない。
実は「初めまして」ではなくて、ナニワのケンイチさんところでお話させて貰ってます。
Krakatauの“Magical Match”が入手出来ないと騒いでいた者(あの頃はHNじゃなかったのですが)です。
そちらのページも、よく読ませて頂いてます。以後もよろしうに。