
インドネシアを代表する人気ロックバンドGIGIのギタリスト、Dewa Budjanaによる、極上のインスト・アルバムである。2001年作品。
今回のテーマは、故郷の発見。
ロック色はなく、メロウなアコースティックフュージョンといった趣の作品である。
アジアンテイストなパット・メセニーとでも言ったら分かりやすいだろうか。いやちょっと違うかな。
とにかく全編を通して、いわく言い難い「懐かしさ」を醸し出すアルバムである。
Dewaの故郷であるバリ島の文化が強く意識されたものであることは、アルバムタイトルやジャケットデザインに明瞭に読み取れる。
それでも、具現された音楽に具体的な“バリ風味”を感じるわけではない(正直に言えば私には分からない)。
少なくとも、そのアプローチに、民族派がしばしば掲げる文化ナショナリズム的な堅さは無い。
はっきり言えることは、一方で故郷バリにこだわりながらも、一方で広く世界に繋がろうとする意志が働いているということだ。
そのバランスこそが、希有な音楽的境地を実現している。
参加メンバーも豪華だ。
ベースにDave Carpenter(アラン・ホールズワース・バンド)、ドラムスにはPeter Erskine(元ウェザー・リポート)といった達人を迎えている。
インドネシア国内からは、Indra Lesmana、Dwiki Dharmawan、Donny Suhendra、Tohpatiなどの大物ミュージシャンや、同じバリ人のギタリストBalawanに加え、Oele Patiselano、Bubi Chenといったジャズ界の大御所も参加している。
意外なところでは、西はじめの津軽三味線をフューチャーした一曲もあり、これも素晴らしい。ちなみにこの曲でドラムを叩いているのは現GIGI(元Krakatau)のBudhy Haryono。
この広がりを纏める求心力として、Dewaの故郷バリ島の風が優しく流れ、それが聴く者の心に「懐かしさ」を喚起させるのではないだろうか。
故郷への回帰ではなく、故郷の発見である。
そして本当は、「回帰」でも「発見」でも、あるいは「再発見」でも構わないのだ。民族固有の文化だなどと言ったところで、本人たちには無意味なわけで、外側から見た時にはじめてユニークなのである。
むしろ文化というものは常に、境界を自由に出たり入ったりする者によって創られて来たのだ。
私自身は、実感として故郷というものを持っていない。回帰すべきフィールドを自分の中には持たない。
そのかわりと言うわけではないが、このアルバムに素晴らしい音楽を発見した。
だから、故郷が必要無いとか、故郷を持つことは悪いことだ、などというつもりもないのである。
インナーには、以下のテクストが引用されている。
Samsara is the Cycle of existence
(birth, life and rebirth) conditioned by karma,
it is the wheel of suffering that characterized
the phenomenon we call life......
Dalai Lama "The Spirit of Peace"に記された言葉である。
敵対的逆トラックバック(笑)させていただきました(爆)
なんか、いー感じですねぇ。ちょっと心が動いております。
ところで、Dave Carpenterという人が元在籍していたAllan Hollswarsという人は、一昨年生で見ました。元SOFT MACHINEのヒュー・ホッパー、エルトン・ディーン、ジョン・マーシャル(ついにカタカナ!)と一緒に来たときですが、なんとなく想像のつく音楽です。
(・・・と、思ったら間違って変なトラックバックにしてしまいました。再度トラックバックするの、最初の方を消していただたら、幸い。お手数かけます! 申し訳ない)
インドネシアというのは困ったところで、商業音楽の考え方が恐ろしくドライなのです。三年前のミリオンセラーが平気で廃盤になったりします。「過去の名盤」という概念など存在しないようです。
こちらこそ、申し訳ない!
う〜、jabaさんとこで言いましたが、かなりヤバい状態です (^o^)。
「平気で廃盤」というとこも、マ、マズいっす。
新良さんの「月虹」も、アコースティック・パーシャを買いにページに飛んだら、「只今売り切れ中」と書いてあって、そしたらそれがレコード屋(いつの時代でしょう)にポンと置いてあったものだから、慌てて奪い取るように握りしめてました (^o^)。
それが、大当たりだったですしね〜〜。
あくどい商法ぢゃないっすよね?? (^o^)
ネットで音楽を漁るようになると、CDというものが、いかに簡単に廃盤になるものか、思い知らされますね。
このblogは目の毒じゃ。
CDなんて買えないおいらなのだった。
ない胸かきむしってしまう。