
生成する異界の旋律、さえも
アラブ歌謡界の、もはや大御所と言っても良いだろう、サミラ・サイードの実に44枚目のアルバム。2008年の作品だ。
1959年(ソースによっては61年)モロッコの生まれ。かの地でも才能ある歌手と目されていたが、83年頃からは活動の拠点をエジプトへと移している。当時も今も、アラブ歌謡界の中心は何と言ってもエジプト(カイロ)である。アラブ世界のスターとなるためにはカイロ方言のマスターが必須だとさえ言われている。もっとも、カイロの音楽シーンは概ね男性歌手が優勢で、女性歌手に関してはレバノン勢の活躍も見逃せない。
モロッコ時代は本名のSamira Bensaïdで活動していたが、現在ではSamira Saidで通っている。本作のようにSamiraとだけ記されたアルバムも多い。Samira Saeedという表記も時折見かけるのはアラビア語の悩ましいところだ。seesaaブログでは残念ながらアラビア文字を表示出来ないので、原語での表記についてはアラビア語のWikiを参照されたし。
とにかくこの人は、とんでもなく歌が巧い。その時々の要請にあわせて様々なスタイルを柔軟に、あるいは節操無く取り入れつつも、第一級の歌手として揺るぎない地位を保って来たのは、やはりその高い歌唱力あってのことだと思う。アラブ歌謡の独特のコブシをグルグルと廻しながら常に正確な音程を維持する彼女の歌は、それ自体が一種の驚異ですらある。
本アルバムも、現代的な欧米ポップスやR&Bのテイストを取り入れて、洗練された仕上がりになっている。容姿だけでなく、その音楽においても、彼女はその年齢を全く感じさせない。まあ容姿に関しては、以前のアルバムのジャケットは結構おばさんだったりするので、そこは色々あるのかも知れないが。。。
アルバムタイトルの「Ayaam hayati」が、さっそく素晴らしい。キャッチーなメロディの隅々にまで彼女の魅力が充填された佳曲だ。コーラスの被せ方も<粋>である。トラックの創りも凝っていて、少々大げさなイントロも実にかっこいい。打ち込みのサウンドが多用されているが、同じ機械で音を作るにしても、これはアラブでしか出て来ない種類の音色では無かろうか。
「Nefsee atkalem」も良い。基本的にはベタなアラブポップスだけど、サビのコーラスが壮絶に美しい。自分の声を重ねていると思われるが、正確なハーモニーを保ったままぐるぐる揺れるという妙技を堪能出来る。
極めつけは「Mayhemnesh bokra」。キューバン・ボレロを思わせる気怠いパーカッションと朴訥なメロディ。なのだが、そこに絡み付くのは奇怪なストリングスに面妖な笛の音。更に追い討ちをかけるのようにぐるぐると揺らぐ驚異のヴォーカル。異界の旋律が生成する瞬間をここに聴くべし。
検索用;ayam,ayyam,hayate,hayat,hayaty
nefsi atlakem,atkalim
may himinish bokra,mayhamnesh,mayhemeneesh,mayhmnesh bokra
アラビア語が母音を文字として表記しないから、こういう面倒なことになる。
nefsi atlakem,atkalim
may himinish bokra,mayhamnesh,mayhemeneesh,mayhmnesh bokra
アラビア語が母音を文字として表記しないから、こういう面倒なことになる。
たしかに「どこをどう整形したらここまで若返って・・・」という疑念の尽きないジャケットではありますが、今回は谷間じゃなく歌に惹かれて買いました。
読めないっつーの!
それはともかく、意外なまでにポップですね。タイトル曲なんて、日本人アイドルのアルバムの5曲目辺りに入っていてもおかしくないかも。タイトルは「デザート・ダーリン♪(わたしの砂漠の王子様)」とか。まあ2曲目のyoutubeの画像の数々を見るにつけ、昔はセクシー・アイドルだったのかも? それでもアルバムを44枚も出しているということは、アイドルから大人のシンガーに脱皮成功組ですな。
http://www.youtube.com/results?search_query=%D8%B3%D9%85%D9%8A%D8%B1%D8%A9+%D8%B3%D8%B9%D9%8A%D8%AF&search_type=&aq=f
つくづくwebというのは便利なものだと感心する次第。