
枯山水ロック。
この記事を書くにあたって自分で調べるまで、スコットランドのバンドだとばかり思っていた。CDのインナーに"recorded at ……,CA"と書いてあるのを読んでも、ああスコットランドのバンドがカリフォルニアで録音したんだ・・・と思っていた。妙だな、とは感じたが、それでも気付かなかった。
思い込みとは恐ろしい。
というわけで、カリフォルニアのバンド、Bad Haggisである。現在までに4枚のアルバムを出していて、この『ark』は2000年に出た2枚目。ハギスとはスコットランドに伝わる羊のモツ煮込み料理の名前で、むろんこのバンド名が私の思い込みの元でもある。
ジャケットには
cutting-edge celtic for new millennium
と書かれていて、何となく意気込みだけは伝わるが、今ひとつ具体的なコンセプトが見えて来ない。バンドのオフィシャルサイトではa band that fuses cutting-edge Celtic with influences of rock, alternative, jazz, pop, groove, world beat, African and Latin influences to produce a hearing-is-believing sonic experience
と紹介されていて、ますます分からない。メンバーは4人。バグパイプにギター、ベース、ドラムスだ。バグパイプの印象は強烈で、全体のトーンを明瞭に方向付けている。基本的にはロックバンドのフォーマットに則っているけど、インスト曲が中心なこともあって、フュージョンと言った方が良いのかも知れない。
リーダーはバグパイプ奏者のエリック・リグラーEric Rigler。L.A.の生まれだが子どもの頃にスコットランドに移り住み、そこでバグパイプを覚えたらしい。スタジオミュージシャンとしてのキャリアは長く、映画『タイタニック』で聴こえて来るバグパイプも実は彼の音である。スコットランドスタイルの口で吹くグレート・ハイランド・バグパイプとアイルランドの鞴で空気を送るイーリアン・パイプuilleann pipesをどちらも自在に操り、楽曲によって使い分けているようだ。ティン・ホイッスル(クレジットではchieftain whistleと記載されているが私には違いが分からない)も演奏している。
ギターはマイク・ホフマンMike Hoffmannという人で、検索してみたらトニー・ウィリアムスのLife Timeにも参加してたりするのでジャズ系のミュージシャンらしい。何曲か入るヴォーカル曲ではベーシストが歌っていて、凄く巧い訳じゃないけど結構良い声だ。
この4人が醸し出す枯れた感じが実にイカしている。ベースが所謂ベースパートを押さえるのではなく中高域でメロディアスに動くことが多く、ちょっとスカスカした感じもあり、それがまた鄙びた無常観にも通じている。
プログレ臭は比較的薄い。ドローン管を3本も持つバグパイプは当然ながら中心音が決まっているし、オクターブ12音の全てが出せるわけでもないので、そもそも複雑な転調には対応出来ない。しかもミクソリディアンというロックにはあまり出て来ないスケールで調律された楽器なので、自ずと「バグパイプならではのメロディ」が紡ぎ出される仕掛けになっている。滲み出る素朴な奥深さの鍵は、このミクソリディアンスケールかも知れない。
これが一曲目の「walking the plank」。
http://www.youtube.com/watch?v=zai1Qkc1Dw8
美しいホイッスルの音が心に残る。
スコットランドのバンドだと思い込んでいたので、ちょっと騙された感はあるが、改めて聴くとやはり良いアルバムだ。他の曲は、ここで少しだけ試聴可能。
http://www.cdbaby.com/cd/badhaggis1
え、ロックでよく使うスケールだと思っていました。
北国時代より酷くなってるかの知れません。何か書く度に一匹湧いて来る感じです。
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認証方式は嫌なんだけど、他にありましたっけ。
黒木さん
え、そうなの?
ロックはよう分からんから適当なことを書いたかな。
言われてみたらそんな気がして来たのでクレジットを良く見たら、たしかにカスタムメイドのプリアンプを使っているようです。
これですね↓。
http://www.hoffmannamps.com/musicalinst.html