
赤道直下の底力
ありきたりの「歌ものポップス」におけるサウンドのクォリティは、その地の音楽文化の位相を知る重要なバロメーターであるというのが、かねてからの私の持論である。その点で、やっぱりインドネシアは凄いと改めて思い知るのが、この一枚。
2002年のアルバム。ジャカルタ生まれのAndien嬢は当時まだ16歳である。ジャケットの顔もほとんどコドモだ。ちなみにこれが2枚目。もっとも、今ではすっかり大人になったAndienはジャズシンガーということになっているので、このアルバムも「ありきたりの歌ものポップス」と括るべきでは無いのかもしれないが、それにしても、この16歳が放つ豊潤な煌めきは驚愕に値する。
バックトラックの創りも凝っている。大体これは、いかなる企画なのであろうか。キーボードにIndra Lesmana、ギターにTohpati、ドラムにはAksan Sjumanと、インドネシアジャズ界の大立物が勢揃いしているのである。そして、それを贅沢とも思わせない彼女の歌の凄さである。アルバム全体の印象としてはジャズの雰囲気は希薄だが、普通にポップスとして相当に上質な音だ。
これが4曲目の「Tentang Aku」。くどいようだが、16歳である。ちなみにトランペットはIdham Noorsaid。この人のことはよく分からないが、やはりジャズ系のミュージシャンらしい。
極めつけは6曲目の「Once I Loved」。16歳がカルロス・ジョビンの名曲を歌うというだけでも唯事ではないが、これまた熱帯雨林の醸成する濃密な官能性を帯びて、しかも下品に陥ることなく、どこまでも素晴らしい。
カワユイね。
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