吉村満壱『バースト・ゾーン』を読了。
巷で評判だった『ボラード病』がそれほどでもなく、正直言って「緩い」印象だったが、こちらは凄い。いや、凄気持ち悪い。ていうか気持ち悪い。でも凄い。よく練られた設定に緻密な描写。仕上がりはヘヴィーな純正SFで、さすが早川書房。
間違いなく傑作ではあるんだけど、ちょっと気になった点がひとつ。話の流れが、あまりにも男に都合よく出来すぎてはいまいか? 中盤ぐらいまで読み進んだあたりで気になり始め、最後まで引っかかったまま読み終えた。読み終えてもやっぱり思う、男どもに甘くはないか?
話の核心に直結する部分であれば、むしろ気にならなかったのかもしれない。そうではなく、プロット上の必然とは言い難いところで、あまりにも男に都合よく出来すぎているように感じるのだ。男どもの身勝手な欲望こそが世界を破滅へと至らしめる、という作品ではない。そう読むことは難しい。であれば、男どもの身勝手な破滅願望を安易に肯定している、ということになり得まいか。
細かいといえば細かいことなので、気にせずに作品世界を楽しめ、とも思うが、存外こういうのって気になりだすと止まらなかったりしませんか?
2016年10月07日
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