松原隆彦『宇宙は無限か有限か』を読了。光文社新書2019。この分野の研究は今世紀に入ってから凄まじく進んでいるので、基礎的な知識ぐらいはアップデートしようと最近読み漁っているが、この本は抜群に面白い。
結論を言ってしまえば、この宇宙が無限か有限かは分かっていない。もう少し言うと、「観測可能な範囲の宇宙」においては有限であるとする根拠は見つかっていない。しかし、そう言われても、では「観測可能な範囲の果て」に行った時に何が見えるのか、凡人の疑問は尽きない。無限というものは、どうにも人の妄想を駆り立てる。
本書は、その疑問の核心に迫るべく様々な角度からスリリングに掘り進む。分かっていない問題について、それがどのように分かっていないのかを知ることが、この上なく楽しい。分かっている問題なら答えを聞いておしまいだが、分からないからこそ妄想し続けることが出来る。
特に予備知識がなくても十分に楽しめる一冊だが、場の量子論について少しは知っていた方が話を追いやすいかもしれない。ただ、残念なことに場の量子論を素人向けに解説した一般書は非常に少ない。殆どの専門家は数式なしで説明することは不可能と考えているようだ。お勧めなのは吉田伸夫『素粒子論はなぜわかりにくいのか』技術評論社2013。
2020年06月12日
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