
海を渡ってジャズ屋に囲まれる
ナザレ出身のパレスチナ人Ruba Shamshoum / ربى شمشوم 。ルーバ・シャムショウムとでも読むんだろうか。ダブリンの学校でジャズパフォーマンスを学び、2017年に発表した本作がデビューアルバムになる。現在はロンドン在住のようだ。
全曲オリジナルで全て本人の作詞作曲。バックは地元アイルランドのジャズ屋さんたちが固める。アルバムタイトルのShamat / شامات はアラビア語で「ほくろ」の意味。
最初に聴いた印象は「よく分からんな」だった。ジャズ素は薄く、アラビックフレーバーもさして感じない。ちょっとぼやぼやした感じ。そして現代音楽風の難解さが少々。ただ、分からないなりに嫌いな音楽ではない。少なくとも「うわあっプログレだあ」と動揺する種類の分からなさ、ではない。
何度か聴くうちに、やんわりとじんわりと馴染んでる。これはこれで良いぞ。
英語で歌っている曲が何曲かあって、最初は割と普通のポップスに思えたが、何度か聴くと歌い方に若干のジャズっぽさを感じる。そう思って聴くと、アラビア語の歌のジャズっぽさも少しずつ見えて来る。そして最終的に、やっぱりジャズじゃないけど、それとは関係なく良い音楽だなあと思う。
バックの編成が分かりにくさの源泉かもしれない。ほとんどの曲でピアノが入らない。ギター、ベース、ドラムス、クラリネットが基本編成といった感じ。たまにチェロが入って一気に現代音楽風味が増したりする。ちなみに地元のミュージシャンといっても素性はまちまちで、ギターはベネズエラ、チェロはルーマニアの出身だ。
本人のオフィシャルサイトで全曲聴くことができる。
一番のお気に入りは2曲目の「Hana / هَنا 」。つくづくアラビア語って綺麗だなあと思う。淡い恋心を綴ったメロディーの美しさもさることながら、そこに柔らかく寄り添うミュージシャンたちの絶妙な間合いの取り方が素晴らしい。クラリネットの優しい音色が本当によく似合っている。加えて独特なコーラスの重ね方にはアラビックなエッセンスも感じられる。