
ブレない柔らかさ
デンマークはコペンハーゲンのデュオFURNS。メンバーはMonika FaludiとMathias Dahl Andreasen。この二人が、どこまでも柔らかく優しい音を紡ぎ出す。
これまでに4枚のアルバムを出しているが、どれも全く同じテイストなので、好きな人は全部好き、ダメな人は全部ダメだと思う。ちなみに私は4枚とも買った。甲乙つけがたいので最新作を紹介する。本作「Ocean Highway」は2019年に出た4枚目。たった今これを書いていて思ったが、このご時世にアルバムを一枚二枚と数えるのはありなのか。かく言う私自身が、Apple Musicで購入した音源をPCで聴きながら今これを書いているのだ。既にディスクではない。若い人たちはどう数えているんだろう。
どういう役割分担なのかよく分からないが、とにかく曲作りから演奏、録音、ミックス、マスタリングまでの全てを二人でやっているようだ。ヴォーカルは常に女声で、ごく稀にインスト曲あり。歌は全て英語。
いわゆる「生楽器」は殆ど入らないので、エレクトリックと言えばその通りなんだけど、尖った感じは全くない。傑出したヴォーカルの優しさもあるが、とにかくサウンド全体の柔らかさが一貫していて、とりわけエッジの取れたエレピの音色が不思議な有機感を醸している。バックトラックのアレンジは程よくシンプル。もちろんチープな印象ではなく、どう言えばいいんだろう、敢えて創り込み過ぎない緩さが、ちょうど気持ちいいレンジに納まっている。メロディも美しく上品。
soundcloudのオフィシャルで全曲聴くことができる。
ハズレ曲は無く、いきなり1曲目から、独特のふわふわした世界観に包まれる。繰り返すが、テイストは一貫しているので、1曲目でダメな人は、その先を聴かなくていいと思う。
6曲目「Rome」の緩さが本当に良い。前々から漠然と思っていたが、スカンジナビア人は英語をメロディに載せる際のセンスが少し独特じゃなかろうか。この柔らかさは生粋の英語圏ではなかなか出てこないような気がする。
特筆すべきは7曲目の「Indian Summer」。このリズム、このメロディをして、ここまで柔らかく仕上げる覚悟は並大抵ではない。しかも、その完成度の高さたるや、どういう種類の攻め方なのか。
気がつけば、あっという間に最終曲。どこまでも、いつまでも、ふわふわと美しい世界に包まれて終わる至福の一枚であった。残る問題は「一枚」という言い方が妥当なのかどうか、だけだ。