2020年08月07日

Hawa Dafi 【Our Story】

HawaDafi.jpg
戦争が日常の街でロックし続ける

Ghazallの記事で、アラブ圏で女性ヴォーカルのバンドは非常に珍しいと書いたが、実はもう一つ気になっているバンドがある。

マジダルシャムスMajdal Shams のバンド、Hawa Dafi هوا دافي 。 結成は2012年で2015年の本作が今のところ唯一のアルバムだ。

マジダルシャムスという街はゴラン高原にある。彼らの言い方だと「Occupied Golan Heights」だ。シリアとの<国境>沿いにあって、街の東端はイスラエルの設置したフェンスで区切られる。携帯電話のない時代、住民は<国境>の向こう側に住む親戚と、緩衝地帯を挟んでメガホンで会話していた(*1)。そういう街だ。

マジダルシャムス自体は、かれこれ50年以上もイスラエルの実効支配下にあるが、彼らは自らを「シリアのバンド」だと言う。つまり、そういう街だ。

そんな街のバンドが、痺れるぐらいに格好良い。アラブ+ロック+レゲエに加えて、どこから紛れ込んで来たのか強烈なロマ(*2)テイストがミックスされている。どういう了見だろうコレは。編成は女性ヴォーカルに、Gt、Gt、Sax、Oud、Ba、Key、Drと、これまた混沌としている。現在はKeyが抜けて7人バンドのようだ。

本アルバムは全12曲。ヴォーカル、ウード、パーカッションだけの純古典風から、ビシッとロックを決める曲まで、なかなかヴァリエーションに富む構成になっている。一曲の中でも謎の展開が多々あって予断を許さない。コテコテのアラブ歌謡一歩手前の曲でギターソロが本気のブルースロックだったりする。

soundcloudのオフィシャルで一通り聴けるが、混沌の極致が9曲目の「Abehlam」だ。粘っこいロマ調ファンクが突如として異界のまったりウードに支配される様は、新手のプログレか、あるいはモードジャズの奇襲か。

地元ではPVを創るのが難しいのか動画は少ないが、5曲目「Shebak Zgher」のスタジオライブがyoutubeに載っている。、パレスチナの首都ラマッラで撮影されたものだが、まあこの格好よさといったらもう本当に一度観て下さいよ。この曲も、油断していると終盤でとんでもない展開になる。

マジダルシャムスは宗派的にはドゥルーズ派信徒の街ということになっているが、実際には殆どの若者は宗教に興味がないと伝え聞く。もちろんミュージシャンもだ。そしてロックし続けるHawa Dafiは格好良い。




*1 en.wikipedia. Shouting Hill
*2 本人たちはgypsyという語を使っている。いずれにせよ、かなり意識して取り入れているようだ。
 
posted by 非国民 at 04:22| Comment(2) | 音楽;西アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大好きなバンドが日本語で紹介されてて嬉しいです!
マジダルシャムス村も行きました。
TootArdは個人的にも仲良くしてもらっています!
Posted by Azusa at 2021年10月14日 08:21
Azusaさん、かような辺境ブログへようこそ。
こちらは需要があったことに驚いています。
Posted by 非国民 at 2021年10月14日 18:00
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