2020年11月14日

微分音ピアノ

中東には時々これをやる人がいて、毎度ドキッとさせられる。
 
世の中には微分音に向いている楽器と向いていない楽器があると思う。向き不向きというよりは、微分音を出した時に違和感をあまり感じない楽器と大いに感じる楽器だ。

弦楽器は概して微分音との親和性が高い。ヴィヴラートの延長のような感じで、割とすんなり耳に入る。

管楽器は時と場合による。古典楽器以外では、微分音を出せるように設計されていないことが殆どなので、若干の違和感が残る。音を外したように聴こえる場合もある。

違和感が最大なのは、やはりピアノだろう。楽器の構造からして、本来なら「音を外す」ということはない。聴く方も「ピアノは音を外さない」という前提で聴くので、奇妙な音が聴こえてきた時に脳が混乱するのだ。

それでも敢えてやる人はいる。最近ドキッとしたのはアゼルバイジャン出身のピアニスト、Etibar Asadli。1992年バクー生まれだから、まだ若い。アゼリー語の表記ではEtibar Əsədliだが、どう発音するのか分からない。現在はパリで活動しているので、エティバル・アサドリで良いか。

問題の演奏はこちら
Etibar ASADLI - MUGAM ( Microtonal Piano )
タイトルのMUGAMはアゼルバイジャン音楽における旋法を意味する。アラビア語で言うところのマカームだ。

その響きの何と不思議なことか。美しいのは間違いないんだけど、微分音の響きの美しさを私の脳がどこまで理解しているのか、正直なところ自信がない。「脳が混乱する快楽」を美しさと誤認している可能性も捨てきれない。美しいと思いつつも、それが正しいのか間違ってるのか判断しかねる、という感じ。

こちらの演奏では、生ピアノで微分音を出している。かなり本気だ。
Etibar ASADLI - Folk Song (Microtonal Piano)

動画の冒頭、自分で調律を変えているシーンの違和感が半端ない。そして、違和感満載のピアノが繰り出すメロディの鮮烈な美しさに、私の脳は心地よく混乱する。

普段はジャズ屋としてレギュラーチューニングのピアノを弾くことも多いようだ。アルバムが一枚出ているので、いずれちゃんと聴いてみようと思う。
 
posted by 非国民 at 10:14| Comment(0) | 音楽;西アジア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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